スピードは必要?
誰でも驚異的なスピードやパワーで相手DFを突破し、切り裂いていくような迫力あるプレーは憧れますよね。例えばラッセル・ウエストブルック。驚異的なスピードで相手を抜き去り、世界でも指折りのスラッシャーです。
しかし、このプレースタイルを目指すのには限界があるのも事実です。
身体能力勝負では絶対に勝てない。スピードやパワーを高めることと並行して、同じ土俵で勝負していたら勝てないというような相手に対し、どうプレーするか、どう戦っていくかを考えていくことが、プレーヤーの成長として、もっとも合理的であると考えています。
トランジションの激しさや選手の大型化、ピックアンドロール等の戦術の多様化、どんどん進化が進み現代のバスケットボールにおいて、本当に必要な要素はなにか?
そんな問いについて今回は考えていきたいと思います。
タイトルにもある、
「バスケットボールにおいてスピードは必要かどうか」
という問いに対して、自身の答えは
「あったらあるだけいいけど、なくても大丈夫」
という答えです。
「むしろ1番必要なのは、スピードをコントロールできるブレーキ機能」
の方だと考えます。
スポーツカーに例えてみると、
時速200km出るスポーツカーでも、ブレーキが正常に作動せず、カーブ時にスピードをコントロールできないスポーツカーは間違いなく困ると思います。(スポーツカーの知識には詳しくないので、あくまでもイメージです)
動画で減速することを利用したプレーをいくつか掲載しています。
そちらと合わせてご覧ください。
スピード勝負の限界?
では、バスケットボールにおいてはどうか、
もちろんスピードはあればあるだけ、相手を素早く抜くこともできるし、有利になる場面は多いです。しかし、そのスピードをコントロールできず、常にトップスピードでプレーをしていたらどうなるか、
プレーの適切な判断ができない
100m走を全力で走りながら、色んなことを考えるのは難しいです。そのスピードを70%〜80%にコントロールすることで、判断に割ける比重が増えます。
怪我を誘発する
スピードをコントロールできず、相手に接触したり、接触を避けようと関節や筋肉に負荷がかかります。
身体能力勝負には限界がある
いざスピードや身体能力で勝てない相手が出てきた時、そこでしか勝負してこなかった選手はそこでできることがなくなってしまい、大きな壁にぶつかってしまうことになります。
などが考えられます。
必要なのはブレーキ機能
では、何が必要なのかということに着目して、先ほど触れた「スピードをコントロールできるブレーキ機能」の方について、見ていきます。
トップスピードで100のスピードが出るけれど、スピードのコントロールが上手くいかず、80までしか減速できない選手Aがいます。
トップスピードで100のスピードが出るけれど、スピードのコントロールが上手くいかず、80までしか減速できない
一方トップスピードは80までしか出ないけど、スピードのコントロールに長けて、20まで正確に減速できる選手Bがいます。
一方トップスピードは80までしか出ないけど、スピードのコントロールに長けて、20まで正確に減速できる
この2人の選手にマッチアップしたときに、どちらが守りにくいでしょう?
断然選手Bです。
選手Aは相手ディフェンスのスピードが100以下の選手には勝負できますが、それ以上の選手には勝負できません。また、相手ディフェンスは選手Aの80から100のスピード帯に標準を合わせておけばいいため、非常に守りやすいです。
逆に選手Bに対してマッチアップする場合は、20から80のスピード帯で標準を合わせなければなりません。
基本的なオフェンスとディフェンスの関係性において、ディフェンスは常に受け身の立場にあります。
オフェンスが止まれば、ディフェンスは止まらなければならない。オフェンスが動けば、ディフェンスもそれに合わせて動かなければいけないという受け身の立場にあるのがディフェンスだと考えます。
ということは80のスピードしかでなくても、スピードをコントロール(減速)して、相手がこちらに合わせて20になった瞬間にスピードアップすれば、トップスピードは遅くても相手を出し抜くことができます。
また、トップスピードで常に動いているわけではないので、状況を認知したり、それに合わせて判断する作業が非常にスムーズにできます。
これが
「スピードはあればあるだけいいが、なくても大丈夫」
「むしろそのスピードをコントロールできることの方が大切」
と考える理由です。
例えばどんな選手?
今NBAで活躍している選手はこのような選手が本当に多いです。例えばルカ・ドンチッチやとトレイ・ヤングなど、この辺のスピードコントロールのスキルがものすごく長けています。
こう書くとただ減速すればいいのかという話になってきますが、決してそうではなく、減速することで得点をクリエイトできる状態にしなければいけません。減速することが目的ではなく、
スピードをコントロールすることで、
- プレーの緩急を生むこと
- ディフェンスをコントロールし、ディフェンスの出方をしっかりと見ること
- 後出しジャンケンの要領でオフェンスをすること
- 得点するためのアウトナンバーの関係を維持すること
などを目的としています。
ピックアンドロールが主流になる現代のバスケットボールにおいて、正しく状況を認知して、判断、適切なプレーを実行するという流れは必須です。単純に1on1だけや身体能力だけで勝負することはもう不可能になっています。
世界中を見ても、そこの流れを無視しても通用してしまう場面があるのは、ヤニス・アデトクンボやウエストブルックぐらいのような気がします。
もちろんスピードはなくても通用するプレイヤーにはなれますが、スピードがあればあるほどいいのは間違いありません。基本的なスピードがある上で、スピードをコントロールできる技術があることが正義です。もっと言えば、フルスピードでプレーしつつ、適切なプレーの判断ができることが理想です。
- 状況の認知や判断がともなうプレーの際に、スピードをしっかりとコントロールできること
- フィニッシュのシーンやドライブの瞬間などの判断が伴わないシーンで出力を上げられること
を両立させることがグッドプレイヤーの必須事項です。
プレー中のトップスピードを上げることと同時に、自分自身の身体を適切にコントロールすること、ボディハンドリングをもっと重点的に考えていきましょう。
すると今まで以上にディフェンスが見えるようになり、身体能力だけに頼らない、相手との駆け引きをメインにしたバスケットボールの本当の面白さが見えてくるかもしれません。