トップガードの共通点
日本や世界の一流ガードといえば誰でしょうか?最近のトレンドで見ると、NBAのアシストランキングの上位にも位置するレブロンジェームズやルカ・ドンチッチ選手、日本で高校生Bリーガーとして活躍している河村勇輝選手がいますね。今挙げた3名には皆、1つの共通点があります。
派手なノールックパスができる?
抜群の得点能力がある?
それも1つですが、少し今回は違います。これらの選手の共通点。
それは
各プレーの2手先以上まで考えて、プレイすることができる
という点です。
ゲームシチュエーションで考える
ゲームで起こりうるシチュエーションで具体的に考えてみましょう。
ゲームの中で頻繁に起こるシチュエーションで考えます。
自分自身がトップにいるガードだと思ってください。トップポジションに位置していて、右サイドから左サイドへボールを展開する動きがあります。
左サイドのディフェンスはそれを少しでも妨げようとディナイをしたり、パンプをしたり、様々な動きをしてきます。それが頭に入っていたら、賢い選手は簡単には右サイドから左サイドでボールを流さず、ディナイをしてくるだろうと読んで、ディフェンスの一手先を読んでバックドアカットを狙います。
ただボールを右から左に流すことばかりを考えている賢さの足りない真面目な選手は目の前で起きている状況をただ見ることでしか、次のプレイの判断ができません。
ボールをキャッチして、止まって、ディフェンスを見て、ディナイをしているのを確認してから、バックドアカットを狙うという流れで、いずれも動作を始めたときはディフェンスに対して後手の動きになってしまい、ワンテンポ遅れ、パスが通らないと言うようなことが発生します。
もちろんレシーバーとの相性やコンビネーション、タイミングも重要な要素ですが、パサーの立場として、一手を予測する【頭】がまず必要になります。
ここまでが一手先まで読める、【少し賢い選手】です。
さらに一流の選手になると、一手先ではなく二手先以上まで読んでプレイすることができます。
こうした選手は
【自分のマークマン】
【自分がパスをしたい選手のディフェンス】
の他に
【3人目ヘルプディフェンス】
の動きを予測して、プレイを決めています。
これが二手先以上を考えたプレイということになります。
先程の状況で言うと、バックドアカットが狙えそうな状況であれば、逆サイドのローポストが裏のパスのカットを狙っている可能性があります。逆のローポストに位置するヘルプディフェンスが寄ることを予想して、バックドアカットをやめ、ポストマンを生かすオフェンスに切り替えたりするプレーです。
また、違う状況で考えると、
インサイドを中心にバスケットを組み立てる際、トップからウィングにボールが落ちた瞬間、
一手先まで見えている選手は
【インサイドが開いている】
【インサイドがミスマッチだ】
と判断し、一手先を見ているので、ボールを受けた瞬間に素早くインサイドにボールを供給することができます。
一方、より先の二手先まで読むことができる選手は、
【逆サイドのヘルプディフェンスが寄ってくるかもしれない】
【素早くダブルチームに来るかもしれない】
とディフェンスの二手先まで読んで、逆サイドの選手にボールを飛ばすことができます。
また、現代のバスケットボールの代表的なプレーと言われるピック&ロールにおいても同様です。むしろこの視点がないと、ピッグアンドロールは成立しません。
ルカ・ドンチッチ選手などは、二手先以上までプレイを読むことができる典型的なグッドプレイヤーです。ボールハンドラーとしてピック&ロールを開始した際、確実に2対1を作ることでダイブしたスクリーナーにコーナーディフェンスがタグ(Tag)・ヘルプ(Help)に来ることをドンチッチ 選手は頭で理解をしています。
https://twitter.com/coachk_k/status/1205476134210527232
頭で理解した動きをもとに、目で見た実際のディフェンスの状況を照らし合わせ、
- コーナーディフェンスがタグ(Tag)に来ていれば→コーナーにキックアウトパス
- タグに来ていなければ→2対1の状況を攻め切る
といった形で、自身の頭で予測した情報をもとに目で得た情報を処理し、二手先まで読んだプレイを可能にしています。
https://twitter.com/coachk_k/status/1200694094877454337
二手先を予測したプレーをするには?
この二手先のプレイは実際に見てから判断していては遅く、プレイの流れの中でテンポを止めずに、あらかじめ立てた予測の上に情報を処理してプレイをすることがとても重要です。
- 二手先まで読んでプレイをするには、
- 相手ディフェンスがどう対処してくるのか
- ここに動いたらこういう状況ができる
- このパターンの時はこうディフェンスが動く
と言う基本的な原則を理解しておく頭と実際にその状況を見極め情報を正しく察知する目が非常に重要になります
ではどうしたらそうした【頭】や【目】を養うことができるのかを解説します。
予測する頭を養う
まずは頭の部分です。
成功と失敗の経験
これはまず1つ目に経験がものをいうところが大きいです。
パーサーとしてどれだけのミスをしてきたか、どれだけのチャレンジをして失敗の経験も成功の経験もしてきたか、といったことが非常に重要です。
様々なプレイを知ること
2つ目にプレイを知っているということがとても大切です。先程のピックアンドロールの話でもそうですが、
- こう動いたらディフェンスは反射的にここに動く
- ここをケアしているときはここがオフェンスは空く
といったことをまず理論的に知っていることが非常に重要です
指導者の方で「よく見てパスを出しなさい」「よく考えなさい」といった指摘の声が聞こえることもありますが、これは半分合っていて、半分間違っています。
多くのプレイの場合、ディフェンスが動くのを見てそれからパスを出していてはワンテンポ遅れ、ディフェンスの対応を容易にしてしまいます。
本当に良い選手は、
自分のアクションによって起きるプレーを知っていて、あらかじめ予測を立てた上に、ディフェンスの反応を見て、反射的に次のプレイを実行している
のでプレイの判断が遅れることがないので、ディフェンスの対応が非常に困難になります。
ですので、まず練習の中で、
- このプレーの時はこことここのディフェンスに注目をしたらいい
- この瞬間はどこが開く可能性がある
というような判断の材料をしっかりと頭に入れることが大切です。
またバスケットのゲームをたくさん見てください。バスケットボール選手は他の選手のプレーを見ないという傾向が非常に強いです。また見たとしても、プレーのハイライトシーンや得点シーンにスポットを当てたものばかりで、そこに至るまでの過程やプロセスというものをあまり見ない傾向にあります。
二手先まで読めるグッドプレイヤーになるためには、「なぜこの得点が生まれたのか」「なぜこのパスが通ったのか」そうしたことを他の映像から考えること、そしてたくさんのアイデアを引き出しに入れる事が極めて重要になります。
指導者の練習の組み立て
練習を組み立てる指導者の方も、そういった判断の選択肢をもとにプレイを実行する【認知→判断→実行】というプレイの流れを意識した練習を組み立てることが大切です。
また、そうしたプレーをチャレンジできる環境作りがとても大切になります。決定的なパスを狙おうとすると、どうしてもターンオーバーが増えます。しかし、パスミスをするたびに、コーチに叱られていたり、怒られていては無難で安全なパスが増え、チャンスが見えていても、そこを狙わないといった状況を作ってしまいます。
パスミスが起きたならば、なぜそこを狙ったのか、どう見えていたのか、そうしたことを選手と共有をし、そのチャレンジを認めてあげることが大切です。そうした前向きな環境にあることが、積極的なパスを狙うことにつながり、失敗の経験から学ぼうという主体的な姿勢を選手に植え付けることができると考えます。
観る目を養う
次にそうした状況見る目を養うという点です。
ストップ動作の徹底
目を養うためには、まず基本となる、バスケットのストップ動作が非常に大事になります。
ディフェンスにプレッシャーをかけられても、正しいボールポジションでボールプロテクトできるか、ボールをレシーブした際に次の動作に素早く移るための安定した姿勢を保つことができるか、こうした基本があることで次のプレーに目を向ける余裕が出てきます。
コンタクトへ慣れる
バスケットはコンタクトが発生するフィジカルスポーツです。ですので、身体をしっかりと鍛えるということも非常に重要です。
ピックアンドロールをすれば、スクリーンやボールハンドラーのディフェンスと接触することもあります。そのコンタクトに耐え、正しい姿勢を保持するためのフィジカルが大切です。
ペイントエリア内でのアシストやキックアウトも同様です。ドライブを仕掛ければペイントエリア内では、必然的にコンタクトが起きます。そのコンタクトに対して、目線が下がってしまえば、次のチャンスを見つける目もなくなってきます。そうしたことを防ぐためにも、コンタクトに耐えるフィジカルトレーニングが非常に重要です。
まとめ
一流のガードの共通点は、
各プレーの2手先以上まで考えて、プレイすることができること
それを実現するには、
プレイの基本的な原則を理解しておく【頭】と実際にその状況を見極め情報を正しく察知する目が非常に重要
です。
YouTubeの動画も参考にしていただけると理解が深まります。どうぞご覧ください。