ピックアンドロールが全盛の今の時代。オフェンスの戦術もどんどん高度化する一方、ディフェンスのピックアンドロールに対する守り方も非常に複雑で、なかなかそれを崩すことは容易ではありません。
特にしっかりディフェンスが整った環境下においては、より困難になります。
そんな中身を解決するのが、アーリーピックという戦術です。今回はそのアーリーピック、ドラッグスクリーンについて、解説をします。
Youtubeの動画と合わせてご覧ください。
アーリーピックとは
アーリーピックとは、
トランジションオフェンスにおいて、リバウンドを取ったセンターなどがゴール下にリムランをするのではなく、スクリーナーとなり、そのままボールハンドラーにピックアンドロールに行くこと
をいいます。
またこのようなスクリーンの掛け方をドラッグスクリーンといいます。
ビッグマンのトランジションでの役割は基本的に
- ドラッグスクリーンによるアーリーピック
- リムランしてのランニングシール
の2つになります。
以下の記事で詳しく解説しておりますので、ご覧ください。
まずは実際の映像を見ていただくのが、1番イメージを掴みやすいと思います。下のTwitterの投稿は様々な戦術が複雑に絡み合った映像になります。
https://twitter.com/coachk_k/status/1232533093346467841
アーリーピックのメリット
アーリーピックのメリットは、大きく2つです。
- スクリーナーのディフェンスがショーディフェンスをする準備ができていない状態でピックアンドロールができること
- ヘルプディフェンスのスクリーンに対する準備がはっきりとしないうちに攻められるということ
です。ひとつずつ解説していきます。
スクリーナーディフェンスがショーディフェンスできない
スクリーナーディフェンスがショーディフェンスできないということは、スクリーンをボールハンドラーがしっかりと使うことができることで、
- オーバーからスリーポイントやペネトレイト
- アンダーされそうになったら、フロントターンで巻き込んでダイブ
- しっかりかかって2on1
という状況が考えられます。
ヘルプディフェンスが準備できない
トランジションの流れでアーリーピックを行うことで、ディフェンスがハリーバックをし、マッチアップに着こうとしている最中に、ピックアンドロールが発生することになります。
そうすることでヘルプディフェンスの対応が遅れ、より大きなズレを作れたり、自らのマークマンを見失ってよりフリーの選手を作ることができる可能性があります。
それらの結果として、オフェンスのアウトナンバーができやすくなるというメリットが発生します。
アーリーピックのコツ
アーリーピックのコツを
- ボールハンドラー
- スクリーナー
- オフボールの3名
の3つの視点から解説します。
ボールハンドラーのコツ
ボールハンドラーはどのタイミング、角度でスクリーンを使うかということが最も大切になります。
ハンドラーの行きたい場所とスクリーナー、ディフェンスが一直線になるセットする瞬間に使うのが基本になります。ボールハンドラーがドリブルの方向を変えることで、瞬間的にスクリーナーとは、クロスする形になります。この辺りは何度も繰り返し、動画をみていただき、タイミングを掴んでもらうのが良いと思います。
ハンドラーはファイトオーバーされないように、しっかりとブラッシングして使うこと、ディフェンスの方向づけに逆らわず、リジェクトの選択肢も頭に入れつつ、スクリーンを使います。
スクリーナーのコツ
スクリーナーは、スクリーンをかける位置と角度が重要になります。
スクリーンを欠ける位置は、ディフェンスにアンダーされない位置にかけるのが基本です。アーリーピックはアンダーで守られると、基本的にはその後の展開がしづらくなってしまいます。ディフェンスがアンダーをしようとしたら、フロントターンでダイブをする動きで、そのままディフェンスを巻き込んで行くとよいです。
あからさまにディフェンスの邪魔をするとイリーガルスクリーンとなってしまうので、あくまでも【ダイブ】する流れで、です。
理想の角度は、ユーザーを活かせたい方向に背中を向ける角度ですが、アーリーピックの流れでかけると、なかなか角度が難しくなります。
ユーザーの前を走っている場合は、途中で止まって、行かせたい方向に向かってスクリーンをかけます。
逆に、ディフェンスの後ろから走ってくる場合は、位置をまず気を付けて、できる限りアングルを変えるということを意識するといいと思います。
下の映像は、瞬間的にスクリーンアングルを変えている高度なパターンです。
https://twitter.com/coachk_k/status/1237733765733961728
オフボールの3人のコツ
このプレイを成功させるのに不可欠なのが、オフボールの状況にある3名のオフェンスプレイヤーです。
オフェンスもトランジションの中で、はっきりとした走るコースやポジション取りをしないと、せっかくディフェンスを崩していても、スペースをつぶしてしまいチャンスを逃す場合があります。
ピックアンドロールはあくまでも、ズレやアウトナンバーを作るきっかけのプレーなので、ハンドラーとスクリーナーで作った2on1のアウトナンバーをしっかりと生かすことを考えます。思考の順番としては、
- 他の3人それぞれが適切な距離感を取ることでディフェンス1人で2人守れない状況を作る
- 次にディフェンスの意識が自分なのか、ボールハンドラーなのかを見て、次の判断する
- 最後に通常のピックアンドロールと同じで、クローズアウトやズレを生かした次のオフェンスを展開する
という順番です。
まとめ
アーリーピックは、
- スクリーナーディフェンスがショーディフェンスできない
- ヘルプディフェンスが準備できない
時間のかからないオフェンス戦術である。
また、成功のために、ボールハンドラー 、スクリーナー、オフボールマンがそれぞれ、協力して動くことが大切である。