身に付けたいスキルや戦術を挙げる
目的と手段
練習メニューの計画の第1歩目は選手たちに「何を身に付けさせたいか」「何を学んでほしいか」を考えることです。その作業なしにメニューを考えることは、基本的にはないと考えてください。ここでは、
「何を身に付けさせたいか」「何を学んでほしいか」=目的
そのためにどんな練習メニューを取り入れるか =手段
です。「何を」というのは、バスケットボールのスキルや戦術だけではなく、身体的な側面やコミュニケーションスキル、人間的な成長も含まれます。
具体的な作業としては考えられる項目をリストにすることである。
下の項目のように
上のリストのような「マインドマップ形式」にしても、目標達成シート(通称マンダラシート)を使ったリストでもなんでも構わないと思います。
自らの経験に基づく項目
様々なレベルのチームや試合、練習、指導書塔から学んだ項目
をここでキチッと項目立てすることが大切です。
優先順位を決める
次に挙げた項目に対して、優先順位を付けます。
それぞれの項目に対して、
- 必ずやらなければならない項目
- その次の項目
- 時間があれば行いたい項目
のように優先順位をつけていきます。
ここで特に考えなければいけないのが「時間」です。
一般的な中学生、高校生が3年間の学校生活の中でバスケットボールに使える時間は
1日 約2時間
1週間 約12時間(2時間×週6日)
1ヶ月 約48時間(12時間×4週間)
1年間 約576時間(48時間×12ヶ月)
3年間 約1728時間(576時間×3年間)
です。多少の前後はあるにしても、だいたいこのぐらいの数字です。
中学生に関しては、部活動で指導しているチームは週5日までの練習と部活動ガイドラインで設定されているはずなので、これよりもっと少なくなるはずです。
無限にあるわけではない練習時間に対して、やりたい練習を全てやるわけにはいきません。
ですので、どれが必要なのか、何を優先的に身に付けたいのかという優先順位を目標の期限から逆算して考えることが大切です。
練習メニュー計画の作成
長期計画 1年単位
優先順位を決めたら、次はメニューの計画表を作成していきます。
1年間の日程表をもとに主要な大会や試合を記入していってください。
主要な大会に対して、
- オフシーズン(個人の基本スキルの準備期間)
- プレシーズン(基礎スキルの準備期間)
- アーリーシーズン(専門スキル準備期間)
- ピークシーズン(試合へのコンディショニング等を整えるための期間)
と期間を分けて、優先順位に基づき、必要な項目を当てはめていく。
中期計画 数ヶ月単位
次に各大会に合わせた期間内の内容をより具体的に計画を進める。
ここで初めて、その期間内に割り振られた項目に対して、どのようなドリルを練習していくかを具体的な内容を考えていく。
月 | 週 | 項目 | 練習メニュー | 重点課題 |
3 | 1 | オフェンス | ハーフコートオフェンス分解 | ハーフコートオフェンスの分解練習。それぞれで見るべきポイントをしっかり理解。オールコートマンツーマンでプレッシャーDF。 |
ディフェンス | オールコートDF導入 リバウンド強化 | |||
その他 | ウエイトトレーニング 体幹トレーニング継続 | |||
コート外 | チーム内での競争 情報共有 | |||
3 | 2 | オフェンス | ハーフコートオフェンスの確認 セットプレイ | 分解した内容を全体像へ落とし込む。オールコートマンツーあらトラップDFヘ流れを確認。 |
ディフェンス | トラップDF導入 | |||
その他 | ウエイトトレーニング継続 | |||
コート外 | チーム内での競争 情報共有 | |||
3 | 3 | オフェンス | DFからファストブレイクの流れ | DFからファストブレイク、アーリーオフェンスの流れを確認する。新入生受け入れの準備でさらなる競争を。 |
ディフェンス | DFリバウンド重視 | |||
その他 | 体幹トレーニング継続 | |||
コート外 | チーム内での競争 新入生受け入れ準備 |
短期計画 1週間単位
最後に1週間程度の期間に対して、それぞれのないようにどの程度時間を割くことができるかを計画していきます。選手の疲労度やモチベーション、特に学校単位で行っている場合は、行事などのイベントとの兼ね合いも十分加味しなければなりません。1日単位での練習メニューは週単位で考えるときにある程度考えておき、前日の状況や習熟度、達成度をみながら変更を加えていくことが必要です。
柔軟な修正
ここまで計画の立て方を説明しました。しかし、選手やチームは常にこちらが思っているようには成長しません。選手によって、成長の度合いは様々で、チームにも好不調の波がある。ここで作成した計画を優先することばかりに目がいって、選手個人を無視してはいけないです。
前提として、
計画した項目全てを完全に習得することはほとんどないに等しい
というのをしっかりと理解していると気持ちも楽になります。
チーム全体の調子や個々の習熟度に合わせて、計画を柔軟に修正しながら、シーズンを進めていくことができるかどうかがとても大切です。
特に目標とする大会が年に2回、3回と育成年代ではあるかと思います。そのピークをどこに設定するのかを考えると同時にそれぞれの大会の結果を踏まえて、目標や計画の再設定をすることを検討してください。自身も経験がありますが、
「ここまで身に付けてこの大会に臨みたい」
と思うこともあるかと思います。しかし、そのスキルの獲得が段階でゲームを迎え、それでも臨める状態に仕上げなければならないこともあります。そのため、一度チームを白紙に戻すことも考えますし、それがむしろ自然であるように思います。その時その時のチームの状況や選手の習熟度をよく把握しながら、適切な判断をすることが求められると感じています。
まとめ
今回の内容をまとめると以下の通りになるかと思います。
- 目的と手段を履き違えることなく、チームに必要な項目を挙げる
- 時間や習熟度を加味して、それぞれに優先順位を決める
- 長期計画で4つの期間を設定
- 中期計画でそれぞれの項目に対して、練習メニューを決める
- 短期計画でその時の状況を加味して、微調整