2つの分析方法
相手チームの分析方法には大きく分けて2つあります。
映像による分析
今の時代、Youtubeなどで簡単に試合の映像が手に入り、撮影した映像等も簡単に共有できる時代です。映像のメリットは、
- 視覚的に相手を分析できること
- クセやパターンなどがはっきりとわかること
などです。
試合映像などを通して、
- 相手チームの具体的なセットプレーのパターン
- アライメント
- ディフェンスのバリエーション
- 相手プレイヤーのクセ
などを見つけ出すことができます。
データ・スタッツによる分析
大きな大会では大会の運営側からスタッツが公表される場合もあります。また、今の時代はタブレットを使用したアプリで自分たちでも簡単に相手チームのスタッツを作成することも可能です。タブレットでのスコアアプリも多く開発されていますので、そちらを活用するといいかもしれません。
調査、分析の項目
分析を進めることで、最終的には
自分たち(選手、チーム)の長所をいかにして発揮するか
ということを考えていきます。そのためにいくつかの項目を紹介をします。
身体のサイズ
ここでは
- 相手チームプレーヤーの身長
- 体重
- 身体の幅
- ウイングスパン
など確認をします。
相手チームに長身の選手がいれば、ビックマン対策をしなければならないし、逆にスモールプレイヤーに対して、ミスマッチを作れないかなどを考える材料になります。
運動能力
持久力
ゲーム終盤まで安定したプレーを持続できる持久力があるのかどうかを確認します。
持久力に乏しい選手の場合、抜群の得点力を持っていても、序盤から激しくプレッシャーをかけたり、ディフェンスでの負荷をかけることで終盤のシュートが落ちてきたりします。
跳躍力
細かい数値での測定は難しいので、あくまでも見た目で判断をします。リバウンドやブロックで脅威になる選手なのかということを確認してください。
リバウンドで脅威ならば、重点的にボックスアウトをかけ、最悪2枚リバウンドについたり、フルフロントでのボックスアウトも検討します。ブロックが脅威になるようなリムプロテクターの場合、アウトサイドに引っ張り出したりすることで、ブロックの脅威を軽減できます。
スピード
実際にスピードの測定は跳躍力と同様難しいため、見た目や主観で判断します。
ドライブが脅威なのかどうか、ブレイク時にどのような走りをしているかなどで判断をしてください。
ボールハンドリング
ボールハンドリングに長けたプレイヤーがチームに何人いるのかと同時にボールハンドリングを弱点とするプレイヤーを確認してください。
ここではボールハンドリングに長けている=チャンスメイカーできるプレイヤーということで見てください。要するに各チームのキーマンです。ドリブルからの突破を得意とするのか、スクリーンからのチャンスメイクなのか、パス能力に長けているのか、などを入念にチェックしてください。
逆にボールハンドリングに乏しい選手も確認する必要があります。できる限りそのプレイヤーにボールを運ばせたり、ボールを長く持たせることで相手チームのリズムを通常と変えることができるからです。
オフェンスのチェックポイント
まず相手の試合全体の攻撃回数をチェックをします。その内訳を
ファストブレイク
アーリーオフェンス
セットオフェンス
サイドラインからのインバウンズ
エンドラインからのインバウンズ
に分け、その成功回数と成功率を導き出してください。
また、
- 使うセットプレーの種類
- その頻度
- 誰がフィニッシャーになることが多いか
- スクリーン主体orドライブ主体orパッシング主体
- アウトサイドが主体orインサイドが主体
もなども同時に確認をしてください。
ディフェンスのチェックポイント
ここでは、相手のディフェンスの種類や頻度などを確認します。
ハーフオート
スリークウォーター
オールコート
マンツーマン
ゾーンディフェンス
とその頻度をチェックしてください。
基本的には
- タイムアウト明け
- インバウンズ
- フリースロー後
にディフェンスをチェンジしてくる可能性が多いことやディフェンスチェンジの際に何かコールがあるのかないのかも見ておくとあらかじめ準備ができる。
映像から確認をする場合は、スティールされたり、ターンオーバーになったシーンから遡りチェックをすると、どんなディフェンスを仕掛けたのか、どこでトラップへきたのかなどが見えてくるので参考にしてください。
トランジションのスタイル
攻撃の回数のほか、攻撃時のファストブレイクでのボールハンドラーになっている選手をチェックします。福岡第一高校でいう河村くんのような選手です。そこに初めにボールを持たせないことで、リズムが変わったり、ファストブレイクが極端に出なくなった離するチームも育成年代では多いです。そのため、要チェック事項です。
また、ボールハンドラーのキャリーのコースがサイドラインを使ったものなのか、ミドルラインを使用したものなのかも重要な点です。
そのチームの一番いいリズムやテンポはどのパターンなのかをよく分析し、
- 一番良さが発揮されるのはどんな時か
- テンポやリズムは遅めor速め?
などをしっかりとチェックしてください。
そのほかに
極端に特徴的なプレイヤーがいる場合、必ずチェックをしたい。
例えば圧倒的なスコアラーがいて、その選手1人のワンマンチームであることや絶対的なシューターがいることなどがあれば、その選手の特徴やクセを盗んでおきたい。
- 得意とするスポット
- ドライブの方向
- スリーポイントはキャッチアンドシュートでしか打たない など
また、これらの選手とよく絡む選手もチェックしておくと、そのコンビのホットラインを遮断できる可能性もある。
ゲームプランの立て方
分析した結果を基にして、ゲームプランを立てていきたいと思います。それぞれの項目を調べることで「相手のストロングポイントやウィークポイントとは何か」が見えてくる。その中でまず忘れてはいけないことが、
自分たちのストロングポイントとウィークポイントはなにか
ということを十分理解するということ。その上で、相手チームと次チームの比較を行っていくことがゲームプラン構築の鍵です。
要するに、
「自分たちのストロングポイント」を【引き出し】ながら、逆に「相手のストロングポイント」は【引き出させず】に「相手のウィークポイント」を【引き出す】ようなプランを用意することです。
ここでは相手のオフェンスの分析を例に説明をします。
「オフェンスの攻撃回数とその種類」を調べた結果、
ファストブレイクからのアーリーオフェンスの回数が全体の 70%
セットオフェンスの回数が全体の 25%
インバウンズからの攻撃の回数が全体の 5%
と分析されれば、このチームは「ブレイク主体のチーム」といえます。
では、次にブレイクにつながったプレーを分析する。オールコートプレスからの得点なのか、ハーフコートでのディフェンスからのブレイクなのかで対策も変わってくるからです。
例えばオールコートプレスからの得点が多いのであれば、プレスダウンに重点を置いた戦術になるだろうし、リバウンドからのファストブレイクであれば、セーフティやリバウンドにかける人数を調整をすることやシュートの終わり方を重点的に意識することが必要になります。
このように対策することで、相手のストロングポイントを抑え、ある程度相手をコントロールした状態で試合を展開していけると思います。
プラン通りにゲームを展開できれば、どの相手にも勝利できるはずですが、実際には相手も同様に分析をしてくるほか、ゲーム中にも何らかの対策を講じてきます。そのため、ゲームの途中でのプランの修正や変更が必要になりますが、この変更ができるだけ小さいほどリスクは少なく、勝利に近づくと考えています。
先日亡くなった野村克也さんも
「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」
と言葉を残されています。
バスケットボールにおいても、シュートが面白いように入るときのような、不思議な勝ち方はありますが、なんで負けたんだろうという不思議な負けはないように思います。
負けの原因は事前の準備で解消できたり、少しでも影響を少なくできるものも多くあります。
事前の準備は安心感を生み、こちらの想定が当たった時にはより大きな指導者と選手との信頼感を生みます。ぜひゲーム前には、今回紹介したような観点から相手を分析していただき、チームのゲームプラン作成に生かして欲しいと思います。
以前の記事の練習のメニューの作成とも関わる内容かと思います。
ぜひ合わせてご覧ください。