オンボールとオフボール
まず、ボールを持っているシチュエーションのことを「オンボール」と言います。
どうしてもバスケットボールではシュートやドリブルなど、ボールを持ったシチュエーションの練習がクローズアップされがちです。
逆にボールを持っていないシチュエーションの「オフボール」の動きというのは、なかなか練習の中で意識して取り組んでいるチーム、選手は多くないのではないでしょうか。
しかし、実際にはバスケットボールの40分間(中学生は32分間)の試合の中で、ボールを持っているシチュエーションはどれくらいでしょう?
そういったことを考えながら、今回はオフボールシチュエーションについて考えます。
試合を構成する要素
バスケットボールの試合を行う際、ゲーム中のコート内の動きに絡んでいるのは以下の要素です。
- 自分を合わせた味方チーム 5名
- 相手チームの選手 5名
- ボール 1個
の計11個の要素からバスケットは成り立っています。
その中でボールを持っているオンボールの状況にあるのは基本的には1人だけ。
残りの9名はディフェンスをしているか、オフボールなシチュエーションなわけです。
どのくらいボールに絡んでる?
では、実際にボールを触れている時間オンボールの時間を計算してみましょう。
1試合 40分
オフェンスとディフェンスの時間が半分ずつだと仮定して、
次チームのマイボールのオフェンスの時間は 20分
試合に出場しているのは 5人
単純にオフェンスの時間を5人でシェアすると
オンボールの時間は 1人4分間
40分の試合時間の中でたったの4分です。あくまでも単純計算ですので、
- ボールが空中にある時間
- どちらも保持していない時間
- 交代選手の要素
などは加味していないので、ポイントガード以外の選手はどのポジションも、この4分という単純計算の数字より短いのではないでしょうか。
では、交代がないとして、1人の選手に与えられた持ち時間を整理してみると
オンボールシチュエーション 4分以内
オフボールシチュエーション 約16分
ディフェンスの時間 約20分
になります。
ボールを持っている時しか活躍できないという選手は単純に試合の中の4分間、全体の10分の1の時間しか活躍できないということです。
逆にボールを持っているときにスペシャルなプレイをしなくても、オフボールシチュエーションで味方を助ける動きをしたり、適切なスペーシングを取れること、20分間のディフェンスをしっかりとできていれば、十分チームに貢献できているのではないでしょうか?
具体的に何ができる?
では、オフボールシチュエーションで何ができるのか、どんなことに意識したら良いのかを考えていきます。
オフボールシチュエーションでできることは、
味方との適切なスペーシングを取ること
味方に対してスクリーンをかけることでチャンスを作ること
ディフェンスを振り切って、カッティングするなどして、チャンスを作ること
リバウンドへ飛び込むこと
次のディフェンスの準備をすること など
です。
高校生の試合や中学生の試合を見ていても、ボールを持ったら強いけど、ボールを持っていないところでは、動き方が分からず、人の邪魔ばかりしてしまう。自分のボールハンドリングに自信があるがために、自分が人のスペースを潰しているにもかかわらず、チームメイトがミスするとふてくされるという選手も何人も見てきました。
将来的に身長に関わらず、ポイントガードをすることもあるでしょうし、他のポジションをすることもあると思います。どうしてもオンボールスキルばかりがピックアップされていますが、育成の年代からオフボールシチュエーションでの動き、目の付け所をしっかりと指導していく必要があると日々感じています。
「ボールを受ける側」の気持ちや見え方、「ボールを出す側」の気持ちや見え方をしっかりと経験することが育成年代では極めて大事です。
もちろん育成の年代では、まずはオンボールシチュエーションでのスキルをしっかりと練習をして欲しいです。しかし、現状として、誰でもすぐに上達するわけではないですし、ましてや試合中に活躍できるところまで行くには相当な努力が必要です。
オンボールシチュエーションでは、
【ボールのコントロール】
+
【オフェンスの状況】
+
【ディフェンスの状況】
を同時に認知、判断して、プレーを実行しなければなりません。
一方、オフボールシチュエーションでは、
【オフェンスの状況(ボールを含む)】
+
【ディフェンスの状況】
と判断や実行に要する要素が少なくて済みます。
ボールを持っていないシチュエーションの時間が長いことや認知や判断のしやすさを考えると、試合で活躍するためには、オフボールの動きを意識して練習することが必要不可欠です。
- ピックアンドロールのスクリーナーとしての動きをマスターするもよし
- リバウンドを極めるもよし
- キャッチアンドシュートを極めるもよし
- クローズアウトに対して、究極のフィニッシュを身につけるもよし
- スクリーンをもらってのアタックを覚えるもよし
試合で活躍する方法はこの他にもたくさんあります。
選手の皆さんはぜひそういった視点を持って、練習に取り組んで欲しいと思います。
クレイ・トンプソンは29分間でドリブル11回という少なさで60点をいう得点をあげています。オフボールでの動きでぜひ参考にして欲しい選手の1人です。
指導者の方が気を付けたいこと
指導者の方は、オンボールの選手のスキルや得点した選手だけでなく、その背景にある状況に注意深く目をやっていただきたいです。
- 誰かがいいスペーシングをしていたからドライブのコースができた
- リバウンドに飛び込んだからセカンドチャンスが生まれた
- いい合わせでパサーも出しやすかったぞ
などしっかりと評価してあげることで、選手ももっとボールのないところでの動きをしっかりとしようという気持ちになると思います。
以上、オフボールシチュエーションの重要性についてでした。